当院の腫瘍科について
犬では約50%、猫で約30%程度がガン(腫瘍)で死亡・もしくは苦しんでいるといわれています。X線・エコー検査を始めとして、検査・診断・治療・手術といった腫瘍に関する一連の流れに対応しております。
CT検査が必要な場合には提携動物病院をご紹介しております。
腫瘍科でみられる症状について
- 乳腺にしこりがある
- 乳腺が腫れている
- 体表にしこりがある
- 体表にイボがある
など
その他にも体表のイボやできものなどで気になる点があればお気軽にご相談ください。
腫瘍科の診断・検査
『腫瘍』といっても、「良性の腫瘍・悪性の腫瘍」、「悪性の場合は、どの程度の悪性度なのか?」、「どんながんの種類なのか?」、「どの部位に発生しているのか?」
など、どのような状態かを検査・診断しながら、診療を進めていきます。
腫瘍科の検査
触診
しこりの大きさ・形・位置を触って状態を判断します。
細胞診
しこりに細い針を刺して、中身を顕微鏡で確認して検査を行います。
病理組織検査
しこりの一部を切除して、検査します。
画像診断(超音波検査・レントゲン検査)
超音波検査・レントゲン検査を行い、しこりの位置を確認して検査を行います。
画像診断(CT検査)
CT検査を行い、発生部位や他の臓器への遠隔転移の有無を確認します。検査が必要な場合は提携動物病院をご紹介します。
腫瘍科の治療
腫瘍の治療には大きく分けて、「①手術」、「②放射線治療」、「③抗がん剤治療」、「④緩和治療」といった治療方法があります。
動物たちに対してどのような治療を行っていくかを飼い主様としっかり相談させていただき、治療方針を決定していきます。
① 手術
外科手術によって腫瘍を取り除くことです。
特殊な腫瘍を除いては、根治を目的として最も適した治療法となります。手術の際には、腫瘍がどのような性質なのかを充分に診断したうえで、最善の手術法を選択していきます。
② 放射線治療
放射線治療とは、放射線を腫瘍に照射する治療方法です。放射線治療にはいくつか種類があります。放射線治療が必要と判断した場合には、高度医療機関と連携を取りながら治療を行っていきます。
③ 抗がん剤
悪性リンパ腫や白血病などの腫瘍で主に用いる治療方法です。症状に合わせて動物にあった適切な薬剤を選択していきます。抗がん剤を使用する際は副作用や経済的なご負担をご説明しながら、ご家族の皆様とご一緒に治療方針を決定していきます。不安な点があれば診察時に随時ご相談ください。
④ 緩和治療
腫瘍が原因となり引き起こされる様々な症状を、点滴、食欲増進剤、栄養補給、痛み止めなどを用いて、和らげてあげる治療です。他の治療法と併用しながら行っていきます。
代表的な腫瘍科の病気
当院の腫瘍科診療ででもよくみられる病気の一部をご紹介します。
肥満細胞腫
(1) 病気の概要及び症状
肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍では最も発生頻度が高く、猫の皮膚腫瘍では2番目に多い腫瘍です。
肥満細胞という皮膚皮下組織、血管、消化管など幅広く存在している肥満細胞という細胞が増殖する腫瘍です。犬の肥満細胞腫はほとんどが真皮や皮下組織に発生し、まれに消化管や脾臓など他の組織から発生することがあります。また、臨床的な挙動もさまざまで、成長が遅く緩やかな経過を示すものから急速に増大し転移する悪性度の高いものまで幅広くみられます。症状としては、無症状が多いが、腫瘍随伴症によっては症状を示す場合があり、肥満細胞中に含まれる顆粒が放出されることで、紅斑、浮腫、出血などの炎症症状を起こすことがあります。
(2) 診断のために行う検査
- 針吸引生検
- 血液検査
- 画像検査(X線検査、超音波検査)
- 病理組織学的検査
(3) 治療方法
- 外科療法
- 放射線療法
- 化学療法
犬の乳腺腫瘍
(1) 病気の概要及び症状
犬の乳腺腫瘍は、中高齢の未避妊雌において最も一般的に認められる腫瘍です。乳腺腫瘍全体のうち50%以上が良性とされ、病理組織学的検査で診断されます。初回発情前に避妊手術をすることで発生率を抑えられます。
症状としては乳腺の腫れ以外に特に示すことはないですが、悪性の場合、皮膚表面の壊死や乳頭孔からの出血や排膿が見られたりします。肺やリンパ節、肝臓などに転移をした場合、様々な症状を示します。
(2) 診断のために行う検査
- 触診
- 病理組織学的検査
- 画像検査(X線検査、エコー検査)
(3) 治療方法
- 手術
- 化学療法(必要に応じて術後に)
- 緩和放射線療法
猫の乳腺腫瘍
(1) 病気の概要及び症状
猫の乳腺腫瘍は猫の腫瘍で造血器、皮膚の腫瘍に次いで3番目に多い腫瘍です。犬の乳腺腫瘍の半分程度の発症率ですが、半分以上が良性とされる犬のものとは異なりほとんどが悪性です。
一般的に未避妊のメスに多く発生しますが、まれに避妊済みのメスや、オスにも発生することがあります。乳腺の腫れ以外に症状はありませんが、猫の乳腺腫瘍は急速に成長し、領域リンパ節や肺に転移するため予後が悪いです。
(2) 診断のために行う検査
- 触診
- 病理組織学的検査
- 画像検査(X線検査、エコー検査)
(3) 治療方法
- 手術
- 化学療法(必要に応じて術後に)
- 緩和放射線療法など
骨肉腫
(1) 病気の概要及び症状
骨肉腫は骨に発生する腫瘍の中でもっとも発生率が高いとされている腫瘍で、悪性骨腫瘍の7~8割を占めていると考えられています。犬では大型犬に多く、高い確率で肺に転移します。一方猫では骨腫瘍の発生自体がまれです。犬の骨肉腫は発生する位置にも傾向があり、前肢では肘から離れた位置に、後肢では膝に近い部位に多く発生する傾向があります。このように四肢の骨に骨肉腫が発生した場合、疼痛や跛行(びっこを引くこと)といった症状を引き起こすこともあります。
(2) 診断のために行う検査
- 画像検査(X線検査)
- 病理組織学的検査(骨生検)
(3) 治療方法
- 外科療法
- 化学療法(必要に応じて術後に)
- 緩和的放射線療法
悪性黒色腫(口腔)
(1) 病気の概要及び症状
口腔内に発生する黒色腫はほとんどが悪性であり、局所浸潤性ならびに転移率が高く予後が悪い腫瘍です。
症状に特異的なものはなく、飼い主が口腔内の腫瘤の存在に気付いて来院する場合や獣医師による口腔内の診察で発見されることが多いですが、よだれや、口臭、腫瘍組織の崩壊による流血や潰瘍などで気づく場合もあります。悪性腫瘍が骨や軟部組織に浸潤すると、骨の破壊や組織の腫脹によって顔の形が変形してしまうこともあります。黒色腫と名前がついていますが、腫瘤が黒色でない無色素性の黒色腫もみられる場合があります。
(2) 診断のために行う検査
- 画像検査(X線検査、超音波検査など)
- 病理組織学的検査
(3) 治療方法
- 外科治療
- 放射線療法
扁平上皮がん(口腔)
(1) 病気の概要及び症状
扁平上皮がんは、口腔内でよくみられる上皮系の悪性腫瘍です。局所浸潤性・骨浸潤性は非常に強く、肉眼的には白色からピンク色の結節性であったり、カリフラワー状に隆起したできものとして見られることがあります。悪性黒色腫と同じく転移しやすく、手術によって切除しても再発率が高いため、予後が悪い腫瘍です。
猫では口腔内の悪性腫脹の中で最も発生率が高く、口腔内腫瘍の約75%を占めます。臨床症状として特異的な症状ありませんが、飼い主が犬猫口腔内の腫瘤に気付いて来院することもあります。よく見られる症状としては採食困難、食欲不振、流涎、食べこぼし、口臭、出血、歯の動揺などの症状があります。
(2) 診断のために行う検査
- 画像検査(X線検査、超音波検査、CT検査など)
- 病理組織学的検査
(3) 治療方法
- 外科治療
- 放射線療法
肝臓腫瘍
(1) 病気の概要及び症状
犬と猫の肝臓に発生する腫瘍は、発生する組織によって肝細胞性、胆管性、神経内分泌性、肉腫の四つに大別されます。これらの肝原発性腫瘍は、犬では発生頻度はそれほど高くなく、転移性腫瘍よりも低いとされています。
症状を示すようになるのは腫瘤が増大することによって食欲不振や嘔吐などの非特異的な症状が現れたりすることによって発見されることが多いです。
(2) 診断のために行う検査
- 血液検査
- 病理組織学的検査
- 画像検査(X線検査、超音波検査、など)
(3) 治療方法
- 外科治療
- 化学療法
犬の膀胱がん
(1) 病気の概要及び症状
犬における膀胱がんは膀胱に発生する腫瘍の約50%~75%を占めます。その中でも特に移行上皮癌は、最も発生しやすい膀胱の悪性腫瘍です。尿路系の閉塞をともなわない場合、初期の症状は血尿、頻尿など一般的な膀胱炎で認められる症状とよく似た症状として現れます。
(2) 診断のために行う検査
- 尿検査
- 病理学組織学検査
- 画像検査(超音波検査など)
(3) 治療方法
- 化学療法
- 外科治療
- 緩和的放射線療法
肛門周囲腺腫
(1) 病気の概要及び症状
肛門周囲腺とは肛門周囲皮膚にある皮脂腺のことで、この皮脂腺が腫瘍化する病気です。肛門周囲腺腫は未去勢の高齢オスで多く認められることから男性ホルモン依存性に発生すると考えられています。この腫瘍は肛門周囲の腫瘍の中で最も発生率が高いものですが、良性の腫瘍であるため、無症状で転移や組織浸潤をすることはまれです。しかし腫瘍の腫脹の結果、排便困難を引き起こすことがあります。肉眼的には境界明瞭な表在性の腫瘤として認められることが多いです。複数認められることもあり、肛門周囲の皮膚が肥厚しているだけだったり、カリフラワー状を呈していたりと様々です。
(2) 診断のために行う検査
- 触診
- 病理組織学的検査
- 画像検査
(3) 治療方法
- 去勢手術
- 外科療法
- 緩和放射線療法
リンパ腫
(1) 病気の概要および症状
リンパ腫とは全身のリンパ腫やリンパ組織、脾臓や肝臓に由来するリンパ系細胞のがんのことです。また、病変の位置から多中心型、縦隔型、消化管型、皮膚(その他)に大きく分けられます。体表リンパ節の腫脹を主訴に発見されることが多いですが、症状は非特異的で、食欲不振や体重減少など発生部位や腫瘍随伴症の存在によって異なる症状が現れます。また、リンパ腫のタイプや発生部位により治療内容や予後がそれぞれ異なってきます。
(2) 診断のために行う検査
- 細胞診
- 血液検査
- 病理検査
- 画像検査(X線検査、超音波検査など)
- リンパ節の切除生検
- リンパ球クローナリティ検査
(3) 治療方法
- 化学療法が一般的です