当院の呼吸器科について
呼吸器科は肺や気管などの疾患に対応する科目です。
呼吸器の疾患は咳や呼吸困難など様々な症状が出ます。また、それらに伴う運動量の低下などが見られることもあります。呼吸器症状は心臓病などの循環器科の疾患、腫瘍の影響など他の疾患が原因となっていることもあります。こういった疾患に対して、外科と内科の両面から治療を行える体制を整えております。
呼吸器科でみられる症状について
- 鼻水が出る
- 鼻血が出る
- くしゃみをしている
- 呼吸がはやい、遅い
- 呼吸が苦しそう
- 呼吸する際に変な音がしている
- 咳をしている
- ふせのような姿勢をして舌を出している(猫)
- リンパが腫れている
など
症状によっては、循環器疾患の可能性もあります。
循環器科についてはコチラをご覧ください。
呼吸器科の診断・検査
呼吸器の症状がみられる場合は、呼吸器のみなのか、他の疾患が影響しているのかなどの原因を精査することが重要となります。そのため、多面的に検査できる体制を整えております。
呼吸器科の検査
血液検査
呼吸器症状の原因となる基礎疾患を診断することができます。また、CRPの測定によっても炎症の存在を発見することができます。
画像診断(胸部レントゲン検査)
肺や気管の状態を確認することができます。超音波検査と同様に心臓疾患の状態も確認することができます。
画像診断(超音波検査)
胸水や腫瘤の診断を行うことができます。また、呼吸器に関する症状の原因にもなる心臓疾患の状態も診断することができます。
代表的な呼吸器科の病気
当院で実施している消化器科診療での対応例の一部をご紹介します。
猫の上部気道感染症
(1) 病気の概要及び症状
俗に“ネコ風邪“といわれるこの病気は、鼻から咽頭までの鼻腔の炎症の総称のことです。この部位の炎症は生体の入ってくる空気の加湿、加温、ほこりや細菌のろ過などの防御機構を障害するため二次的な病気の原因となることが多いです。原因の9割以上はネコヘルペスウイルス(猫ウイルス性鼻機関炎ウイルス)とネコカリシウイルスが原因とされています。このウイルスに感染すると3~4日の潜伏期間の後に、発熱、食欲不振、くしゃみ、鼻水、流涙に始まり、細菌感染によって鼻水や涙が膿性の粘液になり、目が開かなくなる、嗅覚がなくなり食欲が廃絶するなどの症状を起こし、肺炎を併発した場合は死に至るケースもあります。ネコヘルペス(FHV-1)ウイルスでは目に症状が強くあらわれる場合が多く重度の角結膜炎から角膜潰瘍を起こす場合があります。猫カリシ(FCV)ウイルスでの症状はよだれを伴う口内炎や舌の潰瘍が特徴的で、痛みによりものを食べることができなくなります。
(2) 診断のために行う検査
- 血液検査
- 画像検査(X線検査など)
- ウイルス分離(ほとんど行いません)
(3) 治療方法
- 抗ウイルス薬投与(免疫増強薬)
- 投薬治療 (抗生剤など)
- ネブライザー(噴霧)療法
猫の喘息
(1) 病気の概要及び症状
猫の喘息はヒトの喘息と臨床的・組織学的特徴がよく似ている病気です、猫はヒト以外で唯一喘息を自然発症する動物で、その病態においてはアレルギーの関与が示唆されています。
ネコの咳は犬のものと違って大きな音を立てず、ヒューと小さな音を立てる程度です。また典型的な姿勢としては顎を前方に突き出し軽く舌を出すしぐさで、強い咳では床に頸部腹面を擦り付けるようになります。
現在、単一の検査によって猫の喘息を診断することは難しく、身体検査、胸部X線検査、血液検査、気管支鏡検査および気管支肺胞洗浄液(BALF)などの検査結果を総合的に評価して診断することになります。
(2) 診断のために行う検査
- 身体検査
- 画像検査(X線検査)
- 気管支鏡検査(当院ではほとんど行いません)
- BALF(当院ではほとんど行いません)
(3) 治療方法
- 投薬療法(ステロイドなど)
- ネブライザー(噴霧)療法
犬の気管虚脱
(1) 病気の概要及び症状
気管は口から肺に空気を送り、肺から再度空気を送り返す管です。気管はCの形をした気管軟骨を弾力性のある輪状の靭帯が連結することによって構成されたフレキシブルパイプのような形をしています。気管虚脱とはこの気管が何らかの原因によって押しつぶされたような形に変形することによって空気が送れなくなり、呼吸困難、体温調節機能の障害が引き起こされる病気です。
症状としては、激しく吠えたり運動した後に、“ガーガー“とアヒルの鳴くような声を発したり、よだれを流しながら落ち着きなく歩き回ったりします。症状が進むと呼吸困難となり舌の色がチアノーゼをおこし青紫色になります。
(2) 診断のために行う検査
- 臨床所見
- 血液検査
- 画像検査(X線検査、呼吸器内視鏡視鏡検査など)
(3) 治療方法
- 外科治療
- 内科治療
肺炎
(1) 病気の概要及び症状
肺は咽頭、気管を介して外界と接している器官であるため、様々な病原体やほこりなどに接触する機会が多いため、ウイルス、細菌、真菌などを吸引して細気管支炎や肺胞に炎症をおこす場合があります。これらの感染症の多くは幼齢・若齢な犬や猫、また免疫抑制状態の動物において生じると考えられていますが様々な原因が複雑に絡み合って発症することが多く明確な鑑別は難しいです。
肺炎には原因によって大きく分類するとウイルス性、細菌性、真菌性に分類されます。
症状としては重篤になることも多い。犬は発熱、食欲低下、発熱を示し著しい沈鬱状態になり立つこと嫌うようになります。“ゼーゼー”といった湿性の深い咳をするようになり、声が出なくなることもあり、咳を立て続けにした後に吐き気を示すこともあります。健康な時に比べて呼吸が浅く早くなるため頭を伸ばして努力性の呼吸をするようになり、チアノーゼを示すこともあります。
(2) 診断のために行う検査
- 聴診
- 画像検査(X線検査)
- 血液検査
(3) 治療方法
- 投薬療法
- 酸素補充(酸素室)
肺水腫
(1) 病気の概要及び症状
肺水腫とは多くの場合循環器の疾病が原因となって続発する病気です。肺静脈の圧が上昇することによって肺胞や間質に血液の液体成分が漏れ出し、貯留している状態です。努力性の呼吸や“ゼーゼー”と、運動時や夜間から明け方にかけて激しい咳をするようになり、時に酸欠によるチアノーゼを示すこともあります。この疾患は、突発的で重度の場合死に至る危険性もあります。
(2) 診断のために行う検査
- 聴診
- 画像検査(X線検査)
- 心電図検査
- 血液検査
(3) 治療方法
- 投薬療法(利尿剤など)
- 酸素補充(酸素室)