当院の神経科について
神経科は脳・脊髄といった脳脊髄神経系の病気(神経疾患)と、筋肉や末梢神経の病気(神経筋疾患)に対応する科目です。椎間板ヘルニアをはじめとした脊髄の病気に対する外科治療やリハビリテーションを取り入れた保存療法、 てんかんや水頭症といった脳の病気に対する治療に積極的に取り組んでいます。
神経科でみられる症状について
- 痙攣している
- めまいをしている
- 特定の方向に眼球を動かし続けている(眼振がある)
- ふらついている
- びっこを引いてる
- 首や背中を触られると痛がる
- 首を傾けている
- 最近おとなしくなった、または攻撃的になった
など
その他にも気になる点があればお気軽にご相談ください。
神経科の診断・検査
脳や脊髄の病気は、その種類によって突然、激しい症状(全身のけいれん、性格の変化、旋回、足を引きずる等)を起こすことがあります。こういった症状は飼い主様にとって非常にショッキングであり、病気によっては動物の生命に関わることも多いため、なるべく早期に状態を把握して治療を開始することが必要です。
当院では各種検査を提携医療機関と連携して行うことができるため、早期発見・早期治療を行うことが可能です。
神経科の検査
神経学的検査
神経の病変部位がどこにあるのか、病状はどの程度進行しているのか、などを診断するために行う検査です。
画像診断(レントゲン検査・CT検査)
脊椎の奇形・脱臼・骨折・腫瘍などを評価するために行う検査です。CT検査が必要な場合は提携病院をご紹介いたします
代表的な神経科の病気
当院で実施している神経科診療での対応例の一部をご紹介します。
てんかん
(1) 病気の概要及び症状
てんかんとは「大脳の反復的に発作を生じる疾患で、大脳に脳炎や脳腫瘍といった器質的変化のないもの」を指します。具体的な症状としては、体の硬直、四肢の痙攣、よだれがたくさん出るなどといったものが見られ、ほとんどの症状は数分以内で収まります。てんかんおよびてんかん発作は通常放っておくと頻度と強度が増してきます。そして発作がとまらなくなるような状態(てんかん重積)になった場合には、死に至ることもあり速やかに治療を行うことが必要になります。
(2) 診断のために行う検査
- 身体検査
- 神経学的検査
- 血液検査
- X線検査
- CT検査、MRI検査、脳波検査(他院への紹介となります)
- 心電図検査
(3) 治療方法
- 投薬治療(抗てんかん薬 ステロイドなど)
椎間板ヘルニア
(1) 病気の概要及び症状
椎間板に変性が生じ、その内容物が脊柱管を圧迫することで脊髄を傷害して神経症状を引き起こす疾病です。脱出する椎間板の内容によって分類されていて、線維輪が割れて中にある髄核が脊柱管に突出して脊髄神経を圧迫するHansenⅠ型と、脊柱管側の線維輪が変性・肥厚して脊髄神経を圧迫するHansenⅡ型に分類されています。
“HansenⅠ型” ダックスフンドが代表的な好発犬種ですが、その他の犬種にビーグル、コッカー・スパニエルなどがあります。これらの犬種は髄核の脱水や変性が1歳を超えた段階から生じるため、極端に発症リスクが高く、若齢でも発症するリスクがあります。症状の発生は急性で、突然の疼痛や不全~全麻痺を特徴としますが、脱出した椎間板物質が吸収されると自然治癒することもあります。
“HansenⅡ型“ 分厚くなった線維輪が脊髄を圧迫することで、痛みをともなうこともある慢性進行性の不全麻痺を呈します。老齢性に起こることが多く、このタイプは突出した椎間板が吸収されないので、自然治癒することはありません。
(2) 診断のために行う検査
- X線検査
- CT、MRI検査(他院への紹介となります)
(3) 治療方法
- 投薬治療(NSAIDS、ステロイド、ビタミン剤など)
- 外科手術
- コルセット、ケージレスト等の保存療法
前庭疾患
(1) 病気の概要及び症状
前庭とは内耳に存在する平衡感覚を司る器官のことで、この前庭が何かしらの原因によって障害されることで特徴的な臨床症状を呈する臨床症候群の事を指します。特発性のもの以外ではその背景では中耳炎の進行や耳道や脳の腫瘍、薬品の中毒などの疾患が存在します。もっとも一般的な臨床症状としては、頭の傾き(捻転斜頸)、黒目が一方向に流れ続ける(眼振)、転倒、運動失調などがあげられます。
(2) 病気の種類
末梢性前庭疾患と中枢性前庭疾患の二つのカテゴリーに分類されている。
(3) 診断のために行う検査
- X線検査
- CT検査、MRI検査、脳波検査(他院への紹介となります)
(4) 治療方法
- 投薬治療
- 対症療法
水頭症
(1) 病気の概要及び症状
水脳症は脳室内に脳脊髄液が異常に貯留し、その結果脳室が拡張し脳組織が圧迫されることで種々の障害を生じる疾患です。脳室内に脳脊髄液が貯留するものを内水頭症、くも膜下腔に貯留するものを外水頭症と呼び、外水頭症は動物ではまれです。チワワ、ヨークシャーテリア、トイ・プードルなどの小型犬が好発犬種とされています。脳内の圧迫を受ける部位によって発現する症状が異なるため、画一的な症状はありません、症状としては意識レベルの低下、性格や知的行動の異常、盲目、旋回、徘徊、てんかん発作などが挙げられます。
(2) 診断のために行う検査
- X線検査
- CT検査、MRI検査、(他院への紹介となります)
(3) 治療方法
- 外科的治療
- 対症療法
(1) 病気の概要及び症状
高齢の犬や猫に見られることが多く、脊椎が変形し骨棘(骨のとげ)を形成し、ときに骨棘同士が癒合しブリッジを形成します。老齢性の変化と考えられていますが、姿勢や運動、栄養などの要因も脊椎の変形に関係しているとも言われています。変形性脊椎症は症状を示さないことが多く、単純X線検査により偶発的に診断されることも多いです。しかし背側や側方に骨の増殖が起きた場合、脊髄が圧迫され、疼痛や跛行(びっこをひくこと)を示すこともがあります。
(2) 診断のために行う検査
- X線検査
- MRI検査、CT検査(他院への紹介となります。)
(3) 治療方法
- 投薬治療(NSAIDS、ステロイド、ビタミン剤など)
- 外科手術
- ケージレスト等の保存療法